投資信託を暴く

販売会社・投資信託会社等に勤務する仲間がチームで書いてます。

知られざる投信会社のお仕事!投信会社の営業って何やってるの??②

Mexican money / Dinero mexicano / 墨西哥钱

前回は投信会社の営業について、当チームの私見を好き勝手に書きました。

 

hatekinyu.hatenablog.com

 

今回はその続きです。


ところで、皆さん、

  • なぜ販売会社は販売手数料に高いパーセンテージを取るのか(販売手数料はまるまる販売会社に渡る)
  • なぜ信託報酬を高くしなければいけないか(信託報酬は主に販売会社と投信会社に渡る)

という疑問はありませんでしょうか。これ、ここ数年、当局やマスコミ等で言われ続けていたことですよね。
今回はあくまで当チームの私見ですが、それに関する考え方も交えて書きます。

前回は、投信会社の営業は主に、

その仕事は大まかに言うと、新規商品のニーズ集めとその社内へのフィードバックや調整、新規と既存商品の提案、商品が証券会社や銀行等に採用されたら社内を調整した上で販売促進活動を展開、継続したアフターフォローなどです。

 という仕事をすると書きました。その業務の多くの部分を占めるのが、

①既存商品の提案

②商品採用後の販促活動

③アフターフォロー

です。

 

まず①です。今のご時世では新商品は以前と比べてそれほど出てきません。以前は、新商品を、出しては→売れない→放置を繰り返すことで死に体の投信が量産されたものでした。それにより販売会社もそうですが特に投信会社のコストが嵩んでいました。

ここでいうコストは、いくら全く売れてないファンドだろうと、一旦ローンチしたファンドである以上、投資先金融商品の売買や保管等にかかる費用、目論見書や運用報告書、月次レポート類の作成等、さらにそれら業務を行う社員にかかるコストという意味です。ファンドを作った以上、償還しない限り止めちゃだめなのです。

作る側も売る側も非常に狭い業界(数えて無いですが投信協会・投資顧問業協会加盟会社の社員は合計でせいぜい一万人前後かと)であるにもかかわらず、このようなことが起きていたのはひとえに事前のマーケティング不足としか言いようがありません。実際には別の理由もありますが、ここでは伏せます。

ちなみに、非常に狭い業界という意味では、悪い噂は即時に業界内に広がります。

ですので、営業は主に既存の商品を販売会社(証券会社・銀行等)に採用してもらうために提案をしていくことがメインとなります。

 

次に②と③です。
これは商品が販売会社に採用されると、その販売会社の販売員に勉強会・研修会(会社によって呼び名が異なりますが同じことです)を行うことがメインです。
以前は投信会社の社員が、フェイス・トゥ・フェイスかつ、地方にある販売会社の僻地の支店であろうと行っていましたが、コロナ禍やコスト、さらには効率性の観点から、今では動画提供やウェブ会議で行うことがむしろメインとなっています。
この勉強会・研修会を行う人は、中堅以下の投信会社では営業マンが兼ねています。大手や上位中堅では、頻度の多さから専門の部署や人員が配置されることもあり、一般的ではありませんが、プレゼンターやホールセラー等の名称で呼ばれる場合もあります。

投資家の皆さんにとっては、こんな勉強会・研修会は必要なの?という疑問もあるかも知れません。
これは必要なのです。
なぜなら販売員の金融商品や経済に対する知識はそれほどでもないのです。販売会社の社員が怠けているとか優秀じゃない、もしくは双方が馴れ合いでやっているわけではありません。逆に彼らは本当に熱心で優秀な方々ばかりです。
特に銀行等の方々は投信の他にも、日々、預金や融資、その他多くの保険等の金融商品を扱っていて、手が回らないのが実情です。
ただでさえ、手数が回らない中で販売ノルマや事務作業に追われ、かつ金融商品の勉強を日々続けていくということを日々行っているのが販売会社の社員です。

この研修会・勉強会は、一義的には販売員への知識の植え付けですが、投信会社にとっては販売員に対するファンド販売のプッシュという販促活動の一環として位置づけています。


なお、③のアフターフォローは、商品採用直後の販売促進活動が終わった後の販促活動です。売ってくれる販売会社に対する直接またはウェブでの勉強会・研修会、動画・各種レポート提供等がメインであり、やることは②とほとんど変わりません。
しかし、販売会社の社員も暇じゃありません。中堅以下も含めれば数十もある投信会社の営業マンはファンド販売を活性化すべく、限られた機会を狙ってアフターフォローの機会を売り込んでいきます。

記念に撮っておいた240万円

ここまで書いた段階で、気づいたのではないでしょうか。
この業界そのものが高コストにならざるを得ない体質ということに。さらに投信会社のファンドマネージャーや営業、さらに他業種に比べて遥かに高給なその他社員のお給料というコストも加味されます。

 

冒頭の、

  • なぜ販売会社は販売手数料に高いパーセンテージを取るのか(販売手数料はまるまる販売会社に渡る)
  • なぜ信託報酬を高くしなければいけないか(信託報酬は主に販売会社と投信会社に渡る)

の理由はこういうことです。


ネット証券が扱うパッシブ投信にここ数年より注目が集まっていますが、まだまだ投資が広がらない日本では、投資経験が浅い投資家の方々にとってはここ数年注目度が高い米国株でさえ身近ではないもので、直接相談できる販売会社の社員は心強いことは理解できます。

それどころか「投資信託って何?」という方も依然として多いと感じます。

それが販売手数料に跳ね返ります。
投信はお米やティッシュのような生活日用品ではないので、「安いよ安いよ!」では買いません。販売会社の販売員は一人ひとりのお客さまに対して、投資リスク等を中心に商品そのものに加え投資先の投資環境等も含め齟齬のない説明を何日にも渡りたくさんの時間をかけ、納得していただいた時点で初めて、お客さまは投信を買うことになります。かといって、説明にたくさんの時間をかけるのは慈善事業ではありません。

高いコストをカバーするだけのパフォーマンスの投信じゃなければ、どんなに販売員に背中を押されようと、投資家の皆さんは買っちゃいけない・・・というのは当然のことであり理解できますが、業界にいる当チームメンバーとしては痛し痒しという思いです。